落ちぶれると人は離れていく

私の父は事業がうまくいってるときはものすごく羽振りがよく
しょっちゅう中洲のスナックやクラブに
地元の有志の方々と行っていたらしい。

 

父の事業が失敗し、いっきに落ちぶれてからは
そういったところに行くこともなくなり
上級市民の方々とも疎遠になり・・・

 

そんな折、たまにはいいお店でご飯を食べようと
父と母と私の3人で
数年ぶりに父の行きつけだった高級天ぷら屋さんに行った。

 

そこの大将は変わらない態度で私たちを迎えてくれた。
父は大将と2、3言葉を交わし、テーブル席へ。

 

私たちが席についてしばらくして
2人の女性が入ってきた。

 

彼女たちが入ってきたとき
父と母は「おっ」という顔をして
少し微笑みながらそちらを見ていた。

 

どうも知り合いらしかった。

 

でも彼女たちは、私たちの方をチラッと見たけど
あからさまに嫌な顔をしてさっさとカウンター席についた。

 

なんか、嫌な感じ。

 

高校生だった私は、父と母の顔と彼女たちが気になってしょうがなくなってしまった。
私が心配そうに見ていたのに気づいたのか
父と母はすぐに気を取り直して
食事を楽しんだ。

 

そろそろ帰ろうか
と、父が大将に「お会計して」と言った直後
母がスッと立ち、ツカツカと彼女たちのいる席に行った。

 

そして
「あなた、◯◯(スナックの名前)のママでしょ?」
と言った。

 

女性はチラッと母を見て、返事もなくタバコの煙を吐いた。

 


「その態度はなに?
うちの人、今は落ちぶれてるけど昔はあなたの店にたくさん人を連れて行って
何百万って使ってあげたでしょ。
昔のお得意様に挨拶もしないの?」

 

女性は何か言おうとしたが、母は遮って続けた。
「あなた△△さん(父の知り合いの国会議員)の愛人でしょ。
△△さんの奥さんを知ってるけど
悪いけどあなたとは全然違うよ。
奥さんは教養もあって礼儀正しい。
あなたなんか足元にも及ばんよ。」

 

女性はみるみる顔が真っ赤になった。

 

そこで父が
「もういいから帰ろう」
と母をなだめた。

 

そのときの光景、今でも鮮明に覚えている。

 

母の言ったことの良し悪しはさておいて
女性がぐうの音も出ない様子だったのは
痛快だった。

 

当時の私から見ても、本当に失礼な態度の女性だったので。

 

彼女だけでなく、落ちぶれた父に、周りのほとんどの人が冷たくなったんだろうな
と思うと心が痛む。

 

でもそれが現実。
お金を持ってることで築いていた人間関係は
お金がなくなると、失うのは当然の話。
母が女性に言った言葉は、
所詮負け犬の遠吠えってこともわかっている。

 

父も母も、今は別々に暮らしているけど
それぞれに、心穏やかに暮らしている。

 

それが救いだ。

 

 

そしてこういう惨めな、悲しい経験は他にもたくさんあり
それが今の私を作ってる。

 

自分自身、不況の波に簡単に押しつぶされないような事業主にならないといけないという強い思い

 

そして

 

頑張ってる事業主様がこういう思いをしないように、しっかりとサポートしたいという
仕事への信念

 

惨めな思い、しない・させない・ゆるさない!

 

おあとがよろしいようで・・・

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